いくつ知ってる? 鳥の渡りのトリビア5選

前回は渡り鳥のシギチについてご紹介しました。
鳥の渡りについては昔から研究され、近年わかってきたこともあればいまだ未解明の部分もあります。
このブログで渡りのすべてについて語ることはできないので、今回は渡りに関する面白いマメ知識、トリビアを5つご紹介しようかと思います。



そもそも渡りとは
簡単に説明すると、異なる繁殖地と越冬地の間を移動することです。
春~夏に南から日本にやってきて繁殖を行う鳥を夏鳥、秋~冬に北から日本にやってきて冬を越す鳥を冬鳥、渡りの途中で日本に立ち寄る鳥を旅鳥と呼びます。
同じ鳥の移動でも、季節によって山地から平地など比較的近距離の移動は渡り鳥の渡りとは区別され、このような移動をする鳥は漂鳥と呼ばれます。

ウソ 季節によって山地と平地を行き来する漂鳥で、渡り鳥とは区別されます。


渡りのトリビア① ツバメは冬眠しジョウビタキはコマドリに変身!?
冬になると特定の鳥たちが姿を消す説明として「ツバメは冬眠をして、ジョウビタキはコマドリに姿を変えるからだ」などと言われたらどう思うでしょうか。
現代の感覚では明らかにおかしいとわかりますが、実はこの説明は古代ギリシャの哲学者アリストテレスが行ったとされるものです。
アリストテレスと言えば万学の祖と呼ばれ、論理学や形而上学、生物学でも功績を残した人物として知られます。
その彼でも鳥が渡りを行うということを発見することはできませんでした。
渡りは高度な科学技術と渡り先の国々との協力がなければ、解明することが難しかったということでしょう。

ツバメ 夏鳥。冬眠はしません。


渡りのトリビア② 昼に渡る?夜に渡る?
渡りの時期はよく話題に挙がりますが、時間帯まで気にする方はそう多くはないのでしょうか。
渡りを行う時間帯は種によって異なります。

■昼間に渡りを行う鳥
・ワシタカの仲間やツルの仲間、コウノトリの仲間
大型のため、天敵に襲われる心配が少なく、日中堂々と渡りを行います。
日照による熱上昇気流を利用して移動します。

・アマツバメ、ツバメなど
空中に浮遊する虫を食べながら渡りを行います。

■夜間に渡りを行う鳥
・小鳥類
体の小さい彼らは、日中は餌を食べて体力を蓄える必要があります。
天敵に襲われやすい時間帯を避けるという意味もあります。

■昼も夜も渡りを行う鳥
・ガン、カモ類
状況に応じていつ渡るかを判断しているようです。

オオハクチョウと冬鳥のカモたち


渡りのトリビア③ 渡りの方角は遺伝する!
渡りの習性は親から子へ、遺伝で受け継がれることがあるようです。
南東へ渡る鳥の子は南東へ、南西へ渡る鳥の子は南西へ渡るというわけです。
では、南東へ渡る鳥と南西へ渡る鳥の間に生まれた子はどうなるのでしょうか。
どちらかの方角になるというよりも、中間の方角を目指す(この場合南)ようになるそうです。

渡りは遺伝的な要素だけでなく、生後の親や群れの仲間たちからの学習による影響もあります。



渡りのトリビア④ 五感や様々な感覚を駆使して方角を知る
鳥たちは様々な方法で渡りの際の方角を認識しています。
代表的なものだけでも以下のようなものがあります。

・地上の目印
・太陽コンパス
・星座コンパス
・地磁気(地球が持つ磁気)コンパス
・偏光と紫外線
※偏光とは、太陽の光が大気中の水蒸気で散乱されるときに生じる光。
この光を感じ取って太陽の方角を確認しているのではないかという説があります。
・におい
・音
・風向き

渡りの研究では伝書鳩がよく実験に使われたようです。


渡りのトリビア⑤ 渡りの起源の様々な説
渡りの習性はいつどのようにして鳥に身についてのでしょうか。
現在考えられている仮説をご紹介します。

・餌不足説
冬になり餌が不足し、餌が豊富な南方へ移動するようになったという説です。

・氷河期起源説(南下説)
もともと北の地域で繁殖していた鳥が、第四紀更新世の氷河期に入り冬を越せなくなったため南下するようになったが、繁殖の際には生まれた地域に戻る習性があるため、往復するようになったという説です。

・氷河期起源説(北上説)
もともと南の地域に住んでいた鳥が、氷河期の終わりごろ北へ分布域を広げていきました。
しかし冬を越すことはできなかったため、冬には南方へ戻り、この移動が渡りになったという説です。

・大陸移動説
南極付近にあった大きな大陸が、大陸移動によっていくつかに分かれ北上しました。
そこに住んでいた鳥の、生まれた場所に戻ろうとする習性によって移動が行われ、渡りとなったという説です。
しかし、大陸移動は鳥の起源より前であることから、この説はほぼ否定されています。



もうじき、冬鳥が旅立ち夏鳥がやってくる季節がやって来ます。
また、毎年5月と10月の第2土曜日は「世界渡り鳥デー」に定められていて、2025年は5月10日と10月11日がそれにあたります。
折々に渡りについて思いを馳せ、渡り鳥たちを「行ってらっしゃい」「お疲れ様」の気持ちを持って温かく見守っていきたいですね。


【参考文献】

我孫子市鳥の博物館『鳥の渡りの秘密』

別冊日経サイエンス『鳥の惑星 飛翔,渡り,さえずりを科学する』

山階鳥類研究所『山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書』

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