将来は絶滅危惧種!? 身近な野鳥、スズメの魅力と個体数について

スズメは私たちにとって最も身近な小鳥と言えるかもしれません。
都市部の路上や電線、樹上などいたるところで姿を見ることができます。
しかし、身近にあるものほどその魅力は忘れてしまいがちになるものです。
今回はスズメについて調査したことをまとめてみました。


スズメはスズメ目スズメ科の鳥で、市街地から山地の人家のある場所、農耕地や河原など様々な場所に住んでいます。
日本で見られるスズメ科の鳥にはスズメのほかにニュウナイスズメがいて、スズメと比べると頬っぺたの黒い点がなく、見られる場所も限られます。

ニュウナイスズメ(写真:photoACからフリー画像を引用)

バードウォッチングに出かけて小鳥の影を目の端に捉え、なんだろうかと目を向けたときにそれがスズメだったとすると、いくぶんがっかりとした感情になる方は多いのではないのでしょうか。
街の中でならどこでも見られると言えるスズメを、わざわざバードウォッチングで探す人は少ないでしょう。

しかしスズメもよく観察してみると、かわいく魅力的な部分を見ることができます。
たとえばこれから温かくなる季節。
繁殖期を過ぎるとフィールドには巣立ちをして間もない若鳥や幼鳥たちを見ることができるようになります。
スズメの場合、幼鳥には口元に黄色い部分が残っています。

口元がまだ黄色い幼鳥スズメ

また、寒い冬の時期は鳥たちは羽の中に空気の層を作ることで体から熱を逃がさないようにします。
その際には見た目がモフモフとした感じになるのですが、これがなんとも言えなくかわいいのです。

寒い日はモフモフ! この様子は他の鳥でも見られます

見た目だけでなく行動にも注目です。
スズメは鳥類の中では珍しく、水浴びも砂浴びもすることで知られています。
水浴びには羽毛の汚れを落とし、砂浴びには羽についた寄生虫を落とす役割があると言われています。
どちらも好んで行うとは、スズメはよほどきれい好きか、羽のお手入れへのこだわりが強いのでしょうか。

水風呂も砂風呂も好き♪

よく見る鳥といえど、注意深く観察していると普段とは違った特徴や様子を観察できるかもしれません。


さて、そんな魅力たっぷりなスズメですが、近年その個体数が激減しているという話をご存じでしょうか。
2016~2021年に鳥類繁殖分布調査会(日本野鳥の会や山階鳥類研究所、環境省生物多様性センターなどで構成)が全国2,344地点で各種の個体数調査を行いました。
その調査報告によると、スズメの総個体数が20年前(1997~2002年)の調査と比較して、31,159羽→20,627羽と、激減していることが判明しました。
原因は主な住処であった里山や水田の減少、外来種の分布拡大などとされています。

鳥類繁殖分布調査会の調査内容はこちら


スズメの個体数にまつわるこんなお話があります。
1950年代、中国でスズメを、田んぼを荒らす害鳥として国を挙げて一斉駆除を行うということがありました。
その結果、コメの収穫量は改善するどころか大悪化。
今までスズメが食べてくれていたイナゴが大量発生して、かえってコメの不作を招いてしまったのです。

動物の個体数の増減は思わぬところで私たちの生活にもかかわってきます。
バードウォッチングで、「珍しいスズメを探しに行こう!」という未来が来ないことを祈っています。

日本野鳥の会では、1口3,000円の寄付でスズメのかわいいピンバッジがもらえます(2025年時点)。
身近なスズメを守るための行動として、寄付という選択を考えても良いかもしれませんね。

日本野鳥の会のバードメイト寄付についてはこちら


【参考文献・サイト】

叶内拓哉『自然散策が楽しくなる! 見わけ・聞きわけ 野鳥図鑑』

自然環境保全基礎調査全国鳥類繁殖分布調査(2016-2021年)について | 報道発表資料 | 環境省
https://www.env.go.jp/press/110125.html

スズメの減少率が絶滅危惧種レベルという危うさ 全国1000カ所で20年間、研究者と市民が調査 | 環境 | 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/830340?page=4

ツバメやスズメ大きく減る 過去20年間、外来種拡大 – 産経ニュース
https://www.sankei.com/article/20211026-JK4T6J6MEVIHXAWCEVD3LLUNZA/

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