春は営巣 ~身近な野鳥たちの巣作りについて~

暑いくらいの春の日差しが街に降り注ぐ今日この頃。
鳥たちが木の枝や草、綿毛など様々なものを咥えている様子を目にするようになってきました。

春は鳥たちが巣作りを始める季節。
今回は、そんな野鳥たちの営巣について、私たちの身の回りで見かける種類を中心に解説していきます。
普段何気なく聞いている鳥の声や、目にしている行動の裏には、命をつなぐための知恵と工夫がたくさん隠れているのです。


野鳥の営巣とは?──命をつなぐ営みのはじまり
営巣とは、鳥が卵を産み育てるために巣を作ることを指します。
多くの鳥は春から初夏にかけて繁殖期を迎え、この時期に営巣行動が盛んになります。

野鳥の営巣は、ただ単に巣を作るだけではありません。
安全な場所を探し、外敵から身を守り、ヒナを育てるために、種類ごとにさまざまな工夫を凝らしています。
材料を集めるところから、完成するまでの過程は、まさに自然の建築術ともいえる精巧さと知恵に満ちているのです。

人通りの多い駅の防犯カメラの上に作られたツバメの巣
ツバメにとってはここが安心できる営巣場所

鳥の種類によって違う巣作りのスタイル
鳥の巣というと、木の枝の上に作られた丸い形を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、実際にはその種類によって作り方も、使う材料も、設置場所も驚くほど多様です。

例えば、都市部や郊外でよく見かける スズメ や ムクドリ、セキレイ など、身近な鳥たちの営巣には、それぞれの生態が色濃く反映されています。

スズメの巣──意外なところに暮らしている?
スズメは日本全国に広く分布する、もっとも身近な野鳥のひとつです。
チュンチュンと鳴きながら電線にとまる姿は、誰もが一度は見たことがあるでしょう。

そんなスズメの巣ですが、意外な場所に作られることがあります。そのひとつが、電柱の腕金(うでがね) の中です。

腕金とは、電柱に電線を固定するための金具で、ちょうど金属の筒のような形をしています。
この中に小枝やビニール片などを運び込み、器用に巣を作るのです。
電柱に登って作業をする作業員の方々が、スズメの巣を見つけることもしばしばあります。

電柱から出ている腕金

ムクドリの巣──人家の屋根裏に要注意?
ムクドリもまた、都市部でよく見かける鳥です。体がやや大きく、群れで飛び回る姿が印象的ですよね。
そんなムクドリの巣は、実は人家の軒下や屋根裏に作られることがあります。

とくに、瓦屋根のすき間や、換気口の隙間など、ちょっとした空間を見つけると、そこに出入りしながら巣材を運び込みます。
巣を作られてしまうと、鳴き声や糞、さらには羽毛やダニといった問題が発生することも。

そのため、ムクドリの営巣を防ぐために、通気口にネットを張ったり、すき間を埋めるといった対策が一般住宅でも重要になっています。

窓枠の隙間に巣材を詰めるムクドリ


セキレイの巣──建物の屋根のすき間にひっそりと
セキレイの仲間(ハクセキレイやセグロセキレイなど)は、尾を上下にふる愛らしい動きで知られています。
地面で虫をついばむことが多く、街中でもよく見かける野鳥です。

セキレイは、建物の屋根のすき間や、古い倉庫のひさしなどに巣を作ることがあります。
都市環境に非常によく適応しており、人通りのある場所でも意外と大胆に巣作りをするのが特徴です。

巣の材料としては、小枝や枯草、ビニール片などの人工物まで幅広く使い、内側には柔らかい羽毛や動物の毛を敷いてヒナを守ります。

工場の屋根に巣材を運ぶキセキレイ

巣作りに使う材料──鳥の種類ごとの「建材事情」
野鳥の巣作りは、まさに自然素材を使ったDIY。
その材料の選び方や使い方にも、種類ごとの個性が現れます。

いくつかの代表的な例を挙げてみましょう:

スズメ:小枝、枯草、ビニール片、紙くずなど。都市部のゴミも器用に活用。
シジュウカラ:コケ、苔、獣毛(イヌやネコの毛)、羽毛など、ふわふわで保温性重視。
ツバメ:泥と枯草を混ぜて壁にくっつける。
・ヒヨドリ:木の枝や枯葉、都市部ではビニール紐なども。
・カラス類:太めの枝や針金など。

このように、鳥たちはそれぞれの習性や体の大きさ、住環境に応じて最適な「建材」を選び、自分たちの暮らしに合わせた巣を作り上げているのです。

路上に落ちていた鳥の巣
木の枝やビニール紐などで作っています

まとめ──鳥たちの暮らしを知れば、自然がもっと身近になる
春は、野鳥たちにとって命をつなぐための大切な季節。
それぞれの方法で一生懸命に巣を作り、命を育んでいます。

時には私たち人間の生活圏と重なることもありますが、ちょっとした工夫や理解によって、共存することは可能です。
もしあなたの身の回りで鳥の巣を見つけたなら、ぜひその場を離れ、鳥たちが安心して子育てできるよう、優しい気持ちで見守ってください。

自然界の営みを感じるこの季節、鳥たちの命のリレーに心を寄せてみるのも素敵な時間の過ごし方ではないでしょうか。


【参考文献・サイト】

文一総合出版『BIRDER(バーダー) 2025年 02 月号

内田博『卵と巣

唐沢孝一『都会の鳥の生態学

ツバメの巣づくり【学芸員自然と歴史のたより】 | 横須賀市自然・人文博物館
https://www.museum.yokosuka.kanagawa.jp/archives/nature-history/38598

スズメの巣作りを理解する: 特徴、時期、対策とその駆除方法 | コラム | 群馬県前橋市で雨樋修理・交換なら株式会社まるひろ
https://maru-refo.jp/column/1e39b334-ca8f-4d6f-8035-0233ec58e2f5

バードリサーチ 巣箱プロジェクト
https://www.bird-research.jp/1_katsudo/subako/kosodate_new.html

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