近年野鳥観察をしていると、かつて日本では見かけなかった種類の鳥たちに出会うことがあります。
こうした外来種と呼ばれる鳥たちは、しばしば在来種への影響や生態系への懸念など、さまざまな議論の的になり、中には外来種に対して嫌悪の気持ちを抱く方もいらっしゃるでしょう。
外来種問題は、引き続き議論されるべき大切な問題であることは間違いありません。
しかし、フィールドで出会った外来種たちを見て苛立っても、問題が解決するわけではありません。
本記事では外来種問題の議論はいったん脇に置き、あくまで種そのものの魅力にフォーカスを当てて紹介したいと思います。

そもそも外来種とは?
環境省によると、外来種とは、もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物のことを指します。
(参考:https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/invasive.html)
人間の活動によってということなので、自主的に住処を変えた結果やってきた動物たちは外来種とは呼ばないようです。
また、海外から持ち込まれるだけでなく国内の移動(たとえば本州から北海道など)も対象になり、持ち込まれた種は「国内由来の外来種」と呼ばれるようです。
野鳥の場合、観賞用・狩猟用として意図的に持ち込まれたものや、飼育されていた個体が逃げ出して野生化したケースが多く見られます。
ここからは、そんな外来種の野鳥たちについて、詳しく見ていきましょう。
ガビチョウ 〜澄んだ声の持ち主〜

特徴
ガビチョウ(画眉鳥)は、名前のとおり目の周りに白い縁取りがあり、まるでアイラインを引いたような印象的な顔立ちの鳥です。
全体的に茶色の体に、少し黄色がかった部分もあり、地味ながらも整った美しさがあります。
最大の特徴は、そのよく通る澄んださえずり。人間の口笛のように聞こえることもあるほど、音程がはっきりしています。
日本に来た経緯
もともとは中国南部や東南アジア北部などに生息していた鳥ですが、日本にはペットとして持ち込まれたものが野外に放たれたり逃げ出したりしたことで、南東北、関東、中部、九州北部を中心に定着しました。
魅力
鳴き声の美しさは一聴の価値あり。
さえずりのバリエーションも多く、じっくり耳を澄ませたくなります。
また、藪の中をすばしっこく動く姿には、どこか愛嬌があります。
ソウシチョウ 〜鮮やかな色彩の小鳥〜

特徴
全身が緑がかっており、翼には赤や黄色のアクセントが入るソウシチョウ(相思鳥)は、まるで絵本の中から飛び出してきたかのようなカラフルな鳥です。
体長は14cmほどで小柄ですが、その存在感は抜群。
日本に来た経緯
もともとインド北部、中国南部、ベトナム北部、ミャンマー北部などに生息していましたが、こちらも観賞用として輸入された後、野生化したグループが各地で繁殖しています。
魅力
名前の由来にもなっている通り、オスとメスが呼び合うように鳴く姿が微笑ましく、人の心を和ませてくれます。
鮮やかな羽色は、双眼鏡越しでも思わず息を呑むほど。
静かな森の中で出会えると嬉しい鳥のひとつです。

コジュケイ 〜森に声を響かせ地面を駆ける〜

特徴
見た目は小型のキジのような印象で、丸っこい体に茶褐色の羽。
顔には白い斑があり、首回りに赤茶色の襟巻きをしているようにも見えます。
飛ぶよりも地上を走ることが得意な鳥です。
日本に来た経緯
中国南部原産ですが、日本には狩猟用に持ち込まれました。
その後、全国に広まり、今では里山や雑木林などで定着しています。
魅力
「チョットコイ、チョットコイ」と聞こえる特徴的な鳴き声が親しまれており、その声を聞くと、思わず探してしまう人も多いはず。
姿はなかなか見つけにくいですが、ふとした瞬間に飛び出してくるその瞬発力には驚かされます。
ワカケホンセイインコ 〜都会に舞うエキゾチックな緑〜

特徴
鮮やかな緑色の羽に長い尾。
オスは首に黒とピンクのリング状の模様があり、スマートで南国感のある見た目です。
都市部の公園や住宅街でも目撃されることがあり、派手な色と鳴き声で注目を集めます。
日本に来た経緯
インド南部やスリランカに生息していたものがペットとして輸入され、都市部で逃げ出したり放されたりして定着。
関東地方を中心に分布を広げ、個体数は増加し続けているようです。
魅力
群れで飛ぶ姿は圧巻で、ビル街の夕空を背景に舞う姿はなんだか異国情緒を感じます。。
人をあまり怖がらず、観察しやすい点も魅力。
野鳥としては珍しい色合いで、初心者でも発見しやすいのもポイントです。
違いを楽しみ、共に暮らす視点を
外来種の野鳥たちは、もともと日本にはいなかった存在ですが、それぞれが異なる経緯でやってきて、今では私たちの暮らしの中に溶け込んでいます。
在来種との関係性や生態系への影響は、もちろん重要な議題です。
しかし、まずはそれぞれの鳥が持つ個性や魅力に目を向けてみると、野鳥観察の楽しみがより深まります。
美しい声、鮮やかな羽、ユニークな行動。
それぞれの鳥たちが教えてくれる「多様性の面白さ」を感じながら、フィールドでの出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか?
【参考文献・サイト】
侵略的な外来種 | 日本の外来種対策 | 外来生物法
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/invasive.html
森林総合研究所 四国支所/№292:コジュケイ
https://www.ffpri.affrc.go.jp/skk/kenkyushokai/sikokudoshokubutu/kojukei.html
ワカケホンセイインコ / 国立環境研究所 侵入生物DB
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/20090.html
ガビチョウ / 国立環境研究所 侵入生物DB
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/20150.html
くますけ『エナガの重さはワンコイン』
