9月に入ると、秋が近づいてきたという気がします。
夏鳥との別れを惜しみつつ、これから日本にやってくる冬鳥たちに心を躍らせる季節です。
特に私はカモの仲間が大好きで、池にのんびりと浮かんでいるカモの群れを眺めていると心が癒されます。
たくさんのカモたちが見られる季節が待ち遠しくてたまりません。
そんな私のカモ欲を夏の間も満たしてしてくれたのが、日本で年中見られるカルガモです。
水辺をぺちゃぺちゃ歩き、ときには幼鳥たちを連れて泳ぐ彼らの姿に癒された愛鳥家もいるのではないでしょうか。
今回はそんなカルガモについてと、これから渡ってくるカモたち全般に関することについて書いてみました。
そもそも「カルガモ」という名前ですが、マガモより体重が少し軽いからという説、万葉集で歌われた軽池(かるのいけ、現在の奈良県橿原市大軽町付近にあったとされる池)にいたからという説、夏の間も日本にいる留鳥ということで「夏留鴨」と名づけられたという説など諸説あります。
どの説が真実かはわかりませんが、個人的には3つ目が面白くて好きです。
カルガモは他の多くのカモとは違い、オスとメスがどちらも同じような地味な茶色をしていて区別がつきづらいです。
このわけについて調べてみたところ、どうやら夏に日本で繁殖するカモが、ほぼカルガモだけというところに理由がありそうです。
たまに2種類のカモの特徴を持った雑種の個体を見かけることがありますが、カモは他の種類と雑種ができやすいようです。一つの池に複数の種類のカモが群れをなしているからそういった機会が多いのかもしれません。
そのような環境でオスは、同種のメスが他種のオスに奪われないよう、派手な色をして目立つ必要があるのです。
しかし、日本で繁殖期を迎えるのはほぼカルガモだけと言えます(マガモは北海道、本州で繁殖の記録があるそうですが)。つまり、ほかにライバルとなる他種のカモがいないため、色を派手にするよりも、敵に見つかりにくいメスと同じ地味な色をしている方がよいというわけです。
夏のカルガモといえばやはり幼鳥が親鳥にピッタリくっついている微笑ましい様子が見所ではないでしょうか。
カモには、孵化後初めて見た動くものを親だと思い込む、刷り込み(インプリンティング)という有名な習性があります。
鳥類は「早成性」と「晩成性」に分けられます。前者は卵の中である程度成長して孵化後まもなく自立して歩くことができ、後者は孵化後しばらくは巣の中から出られず親鳥に世話をしてもらわないと生きていけません。
カモの仲間は早成性にあたり、孵化後すぐに自力で活動できます。しかし体温調節が自分だけでは難しく、また捕食者への警戒や採食場所を探すことなども一羽だけではできません。
そこで、孵化後しばらくは親鳥にぴったりくっついて、温めてもらったり天敵から守ってもらったり、餌場まで連れて行ってもらったりする必要があるので、この刷り込みという習性は生きていくのにとても大きな役割を担っているのです。
今回改めてカモの仲間たちについて調べ、彼らの生態や習性について理解を深めることができました。
今年のカモ観察の準備は万端、あとは彼らが渡ってくるのを待つばかりです…!
【参考文献】
嶋田 哲郎(著) 森本 元(監修)『知って楽しいカモ学講座 : カモ、ガン、ハクチョウのせかい』
くますけ『エナガの重さはワンコイン』
カルガモ、実はおしゃれさん 翼の内側に輝く羽根 – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2803H_Z20C13A8000000/
カルガモ|日本の鳥百科|サントリーの愛鳥活動
https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/4537.html