尾が長いだけじゃない! オナガの分布の謎と生態について

本ブログの記念すべき第一回目に取り上げる鳥は、オナガです!

オナガは全長37cmほどのスズメ目カラス科の鳥で、真っ黒な頭部と青色の羽、何より名前の通り長い尾羽が特徴です。
東日本ではそれほど珍しくはありませんが、西日本だとあまり見られないそうで、関西の探鳥家が関東に来た時に見たい鳥リストに入る野鳥だそうです。

分布の話をもう少し広げ世界に目を向けると、面白い話があります。

オナガの分布は世界的にみると、中国、韓国、日本を含む東アジアと、およそ9000キロも離れたスペイン、ポルトガルのあるイベリア半島に分かれて分布しています。
なぜこんなにも離れた東西に分かれて分布しているのでしょうか。

これについては、当初は以下の二つの説がありました。

・16世紀に東アジアから香辛料とともに持ち込まれたという人為分布説
・ユーラシア大陸に広く分布していたが、両端を残して消滅してしまったという自然分布説

二つの説のどちらが正しいのかは1997年の発見によって決着しました。
イベリア半島南部で、約44,000年前のオナガの化石(上腕骨の一部)が発見されたのです。

そんな大昔に人間が別の場所からイベリア半島に運んできたということはありませんから、オナガの東西の分布については自然分布説が正しいことがわかりました。

かつてはユーラシア大陸に広く分布していたと考えられていますが、それを裏付けるには現在はオナガが分布していない地域から化石が発見される必要があります。

オナガは協同繁殖社会を形成する鳥としても知られています。
協同繁殖社会とは、オナガの場合簡単に言えばヒナを育てるのがつがいのオスとメスだけでなく、そのほかの若鳥がヘルパーとして子育てに参加する仕組みです。

オナガは10~20羽ほどの集団で生活していて、群れの中に複数の巣が作られます。そこで育ち、巣立った若鳥の一部はその集団に残り、抱卵中・抱雛中のメスやヒナに給餌したり、ヒナのフンを巣の外に運び出したりして子育てを手伝うのです。
このヘルパーの役割をするのはいずれもオスのオナガです。若鳥の間は、繁殖に適した場所が年上のオナガに占拠されてしまっているため、なかなか自分のなわばりが持てないからだと考えられています。

こうした自分の子ども以外の世話を手伝うヘルパーの習性は、エナガやバン、ツバメなどにもみられる習性です。

尾が長いだけじゃない、オナガの興味深く、魅力あふれる生態の紹介でした!

【参考文献】
公益財団法人日本野鳥の会『日本野鳥の会とっておきの野鳥の授業

公益財団法人山階鳥類研究所『山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書

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