AI×バードウォッチングについて考えてみる ~AIとの上手な付き合い方~

近年、AI(人工知能)の急速な進化と活用が世間を大いに賑わせています。
ニュースやSNSでは、生成AIによる画像や動画、さらには文章作成に至るまで、あらゆる分野でAIの存在感が高まっています。
その波は、私たちバードウォッチングの世界にも確実に押し寄せています。

本記事ではAI×バードウォッチングをテーマに、現状と未来について考えてみたいと思います。



AIによるバードウォッチングの新たな体験

AI技術の進化により、バードウォッチングはより快適で、より深い体験ができるようになりつつあります。
たとえば『Merlin Bird ID』というスマホアプリではAIを活用し、野鳥の写真や音声、どこで出会ったかなどの質問に答えるなどの方法で鳥を識別することができます。
野鳥に詳しくない初心者バーダーでも、図鑑を引くよりも早く簡単に鳥の識別ができるようになるのです。

日本野鳥の会がYoutubeでこちらのアプリを紹介していて、安心して利用できます。
https://www.youtube.com/watch?v=K0qPBjLcIPk



また、chatGPTに今の時期に見られる野鳥は何かを質問すれば、具体的な種名とともに答えてくれます。
居住地を合わせて伝えれば、近場のおすすめ探鳥地も教えてくれます。

さらに、私たちが撮影した鳥の写真に対して、AIが補正や解析を行い、より美しい作品に仕上げるサポートをしてくれるツールも増えています。

私の方でAIを使っていくつか画像を生成、補正を行ってみました。
たとえばこちらの画像。
もともとはメスのイソヒヨドリの画像だったのですが、chatGPTに「オスの色合いにして」などというような指示を出して生成したものです。

私が撮影したイソヒヨドリのメスの写真
AIが生成した、オスの色合いに修正した画像

AIはオスのイソヒヨドリのおおよその色合いを理解していて、一見特徴的には本物と遜色なさそうに見えます。
一方で全体的に違和感を覚える仕上がりなのも否めず、さすがにこれを本物のイソヒヨドリの写真として出すには難しいでしょう。
しかしより動物の画像生成に特化したAIであれば、この問題はクリアできるかもしれません。

また、こちらは画像編集ソフトウェアのPhotoshopを使って、アオジにかぶった枝を消してみました。
素人の私でも割とすぐできたので、使い慣れている人ならばより自然な仕上がりにできるでしょう。
このPhotoshopにも生成AIの技術が活用されています。

Before アオジに向かって右下部分に小枝がかぶっています

After 小枝を消し、アオジの羽毛や背景を生成



AI生成の画像と誤情報のリスク

一方で、SNSなどではAIによって生成された存在しない鳥の画像や、現実にはありえない行動をとる鳥の動画が拡散されています。
たとえば、極彩色に輝く、自然界には存在しない羽色の鳥や、人間のような動きをする鳥の映像が注目を集めています。

こうしたコンテンツは一見すると面白く、魅力的に映りますが、バードウォッチングや鳥類学における正しい知識の普及という観点から見ると、大きな問題も孕んでいます。
特に、初心者や子供たちがこれらの偽情報を事実だと信じてしまうリスクは無視できません。

サムネイルのエメラルドグリーンなツバメ。ミドリツバメという種は存在しますが、こちらはAI生成画像です。



AIでバードウォッチングがもっと楽しくなる事例

それでも、AIを正しく活用すれば、バードウォッチングの楽しみ方はこれまで以上に広がります。

先述した野鳥識別アプリを使って、手軽に野鳥観察に必要な知識を手に入れ、出会った鳥たちをスマホに記録していく。
AIと相談しながら、明日の探鳥地を考える。
撮影できた大好きな鳥にかぶってしまった枝などの障害物を取り除き、より鮮明な形で保存する。
そんなことをAIを使って自由にできたとしたら、とても良い体験になるのではないかと思います。

AIとの付き合い方

バードウォッチングとAIの関係は、対立するものではありません。
重要なのは、AIの力を正しく理解し、賢く活用することではないかと思います。

AIが生み出す情報やコンテンツを鵜呑みにせず、自分自身の観察眼と知識を大切にしながら、AIをサポートツールとして取り入れていく。
そんな姿勢が、これからのバードウォッチングには求められていくのではないかと思いました。

自然の中で鳥たちに出会う喜びは、AI時代になっても変わりません。
その感動をより深く、豊かに味わうために、AIとの上手な付き合い方を身につけていきたいですね。


野鳥を識別、登録できるアプリについては過去こちらでも紹介しています。


【参考文献・サイト】

文一総合出版『BIRDER(バーダー) 2025年 04 月号

文一総合出版『BIRDER(バーダー) 2025年 05 月号

ChatGPT
https://chatgpt.com/

PhotoshopのAIを使用してワークフローを効率化しましょう | Adobe 日本
https://www.adobe.com/jp/products/photoshop/ai.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です