オスの美しい羽の色、ぶっちゃけ不便じゃない? 鳥が美しい意味と生き残れているワケ

もうすぐ冬鳥が渡ってくる季節ですね。ジョウビタキやルリビタキ、ベニマシコなどの色鮮やかな小鳥や、マガモやオシドリといったカラフルなカモの仲間たちがやって来ます。
バードウォッチャーたちにとってはうれしいことですが、こんな風に考えたことはありませんか?
あんなに目立つ色をして、天敵に見つかってしまうんじゃないか?
ここまで美しい色をしている必要はあるのか?
色鮮やかな羽を持っているのは大抵の場合オスです。オスはなぜあんなに美しい色をしているのでしょうか。一見生存に不利なように思えるのに、今まで生き残ってこれたのはなぜでしょうか。
今回はそんな疑問について調べてみました!

オスが美しい色をしているワケ メスへのアピールとハンディキャップ理論

もっとも大きな理由は「メスへのアピール」です。オスが鮮やかな色彩をまとうのは、自らの健康状態や栄養状態を示すサインであり、メスに「優れた遺伝子を持っている」と伝える役割を果たします。色鮮やかな羽毛や独特の模様は、メスにとってパートナー選びの重要な判断材料なのです。

さらに進化生物学では「ハンディキャップ理論」と呼ばれる考え方があります。これは、派手な羽や目立つ行動は天敵に狙われやすく一見不利に思えますが、それでも生き延びていること自体が「強靭な体力や優れた能力」を証明しているというものです。つまりリスクを背負うことで、自らの資質を誇示しているのです。

美しい羽=優秀なオスという判断をメスはしているようです

なぜ目立つのに生き残れるのか?

鳥のオスが美しい羽色を持ちながらも、種の存続にとって大きな不利にならないのには、いくつかの理由があります。
まず、子育ての役割分担が影響しています。多くの鳥類では、卵を抱いたり雛を守ったりするのはメスの役割であり、そのためメスは地味な羽色をしています。これは、巣にいる間に外敵に見つかりにくくするための保護色として機能しています。
一方で、オスは繁殖期に派手な色でメスにアピールし、繁殖が終われば子育てを手伝わないか、手伝ったとしても巣の防衛や採餌など比較的外での行動に従事するため、派手さが直接子育てのリスクにはつながりにくいのです。
オスメス両方が子育てに積極的に関わる種では、オスが特別派手なことは少なく雌雄が同じような色をしている傾向があります。これは、両親がともに巣に留まる場面が多いため、捕食者に目立たないことが重要になるからです。

美しいオシドリのオスは子育てにほとんど参加しません


また、鳥にとっての天敵が見えている色は、人間とは違うということも理由の一つです。
鳥たちの天敵となる哺乳類や爬虫類の多くは、世界を人間とは異なる色で見ています。特に哺乳類やヘビは赤やオレンジといった色を見分けにくいと言われています。これは人間が「三色型色覚」なのに対し、他の哺乳類やヘビが「二色型色覚」か「単色型色覚」であり、多くの色を見分けることが苦手だからです。そのため、鳥の鮮やかな羽色が必ずしも捕食リスクを高めるわけではないようです。
このように、役割分担や捕食者の視覚特性が組み合わさることで、オスの派手な羽色は種の存続に深刻な不利をもたらさず、むしろ繁殖成功のために進化してきたと考えられます。

人間にとっては目立つ赤でも、ほかの動物にとっては見えづらいのです

一見種の存続には不利に思える美しい羽の色。しかし美しい色にも、今まで生き残れているのにもそれなりの理由があるようです。
綺麗な羽をした鳥たちを観察できるととてもうれしいですよね。鳥たちが今までその羽の色を持ちながら繁栄し続けてきたことに思いを馳せてみるのも、良い楽しみ方かもしれません。

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【参考文献・サイト】

ハンディキャップ原理:誤った仮説がいかにして科学的原理となったか – PMC

性選択 – サイエンスダイレクト

The Evolution of Bird Coloration – Astrophysics Data System

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