近所の川でカワセミが営巣しているようなので、最近毎朝観察に出ています。
川の擁壁に空いた穴の中に産卵し、親鳥がその周辺で魚などのエサを取っては巣に持ち帰っています。
中にいるヒナに給餌しているのでしょう。
エサを持って巣に戻り…
またすぐ狩りへ!
カワセミは一度の産卵で4~7個の卵を産みます。
子どもたちのため、水に飛び込みエサを取って巣に持ち帰る。
暑い夏にこの行動を1日に何度も繰り返すのは相当大変ですね…。
しかしカワセミファンにとってはシャッターチャンスかもしれません。
水に飛び込む瞬間や獲物を咥えて巣に持ち帰るところを狙って撮影するのもいいですね。
カワセミは自然の中だと、水辺近くの土の壁に奥行40~90cmの横穴を自分で掘り巣を作ります。
土の壁がない場所だと、人間が設置したコンクリート擁壁の穴を利用して営巣することがあります。
ところで、この擁壁に空いた穴ですが、もともとどんな目的で空けられた穴かご存じでしょうか。
コンクリート擁壁には排水用の穴が設置されていることもありますが、写真のこの穴は違います。
実はこの穴、カワセミが巣を作るために空けられた穴だそうです!
この擁壁は「とりす工法」と呼ばれる方法で設置されています。
とりす工法とは、新設されるコンクリート擁壁に直径7cm程度の穴を設け、その背部に営巣することのできる「土柱ブロック」をセットし、野鳥の繁殖を支援するシステムで、株式会社カンケンによって開発されたそうです。
画像引用元:『とりす工法(カワセミ営巣支援工法)|株式会社カンケン』(https://www.kanken.co.jp/seihinannai/shingijutsu/seihin/torisu.html)
経費がほとんどかからない、施工が簡単で確実な性能が確保できる、様々な擁壁に対応でき、長期間機能が維持できるといういいことづくしの工法で、カワセミやヤマセミの営巣を支援するため、河川の擁壁設置の際に取り入れ始めているようです。
営巣地が減少しつつある野鳥たちのために生み出された、とりす工法。
町中の川でこの穴を見かけたら、野鳥への愛にあふれた技術に思いを馳せてみるのも良いかもしれません。
【参考文献】
叶内拓哉『自然散策が楽しくなる! 見わけ 聞きわけ 野鳥図鑑』
唐沢孝一『都会の鳥の生態学』