冬の公園を歩いていると、コンコンコン…と木を叩く心地いい音が、冷たい空気に響くのを感じます。
今回は、当ブログのアイコンにも描かれている、キツツキの仲間たちのお話です。
キツツキはほとんどが渡りを行いませんが、冬になると山から平地に降りてきて、木から葉が落ちて観察しやすくなることも相まって、冬の鳥というイメージが強いかもしれません。
この冬、キツツキたちの生態に思いを馳せながら、バードウォッチングで彼らを探してみてはいかがでしょうか。


ご存じの方も多いと思いますが、日本には「キツツキ」という名前の鳥はいません。
「キタタキ」ならかつて日本の対馬に生息していましたが、すでに絶滅しています。
また、アメリカにはキツツキと名前につく鳥がいます。
たとえばドングリキツツキ。
木に大量の穴を密集してあけて、そこにドングリを詰め込む独特な習性を持っています。
気になる方は「ドングリキツツキ」で検索してみてください。
とにかく、日本ではキツツキ科の鳥には「キツツキ」とはつかず、「~ゲラ」と呼ばれます。
「ゲラ」の由来について『図説 日本鳥名由来辞典』によると、平安時代にテラツツキと呼ばれていたものがケラツツキに変化し、それが略されてケラとなったそうです。
テラツツキの由来については諸説ありますが、木造の寺をつついていたことからという俗説があるそうです。
日本では現在10種類(アオゲラ、ヤマゲラ、クマゲラ、アリスイ、オオアカゲラ、アカゲラ、ノグチゲラ、コゲラ、コアカゲラ、ミユビゲラ)のキツツキを見ることができます。

キツツキは主に木の中に隠れている昆虫類やクモ類を食べています。
木を叩いた際に出る音で、中に空洞がないか(=虫がいないか)を判断しながら獲物を探しています。
秋から冬にかけては木の実を食べることも多いようです。

キツツキが木を叩く目的は3種類あります。
ひとつは先ほど触れましたが、食べ物を探すため。
もうひとつは、ドラミングです。
ドラミングは主に春に行われる行動で、ほかの鳥でいうところのさえずりを木を叩いて行うのです。
異性やライバルに向かって自分の存在をアピールするために、短時間に高速で木をつつくということを繰り返します。
ドラミングでは大きな音が発生しますが、木にはあまり穴はあかないようです。
↓ドラミングの様子の動画
※映像はかなりブレていますので音をメインにお楽しみください。

最後が巣を作るためです。
数日かけて木の幹に円形の穴をあけて、中に広い空間を作り出します。
キツツキが作る巣穴は他の鳥たちにとっても便利なようで、しばしば他の鳥がキツツキの巣穴を再利用していることもあるようです。

キツツキは固い木に何度も何度も頭を打ち付けるわけですが、脳震盪にならないのか、という疑問が定期的にキツツキ界隈で持ち上がります。
以前は、キツツキの頭部に衝撃を吸収する仕組みがあると考えられていましたが、近年の研究ではむしろ逆の結果が出ています。
頭部に衝撃が吸収される構造があると、木に穴をあけるための衝撃も弱まってしまい、穴をあけるのに時間と労力がかかってしまうため、頭部にはつつく際の衝撃がそのまま伝わるようになっているのだそうです。
それでも脳震盪を起こさないのは、キツツキの脳が小さく、木を叩いた際の衝撃による圧力も小さくなるからとのことです。
しかし、そのほかにも脳を守る防衛手段があるのではないかと考えられ、研究が進められています。

キツツキの生態や行動について知れば、木をつつくその姿を見たときの感じ方も変わってきますね。
今冬も後半戦と言ったところでしょうか、たくさんのキツツキを探してバードウォッチングに精を出したいと思います!
【参考文献】
日経サイエンス社『鳥の惑星 飛翔、渡り、さえずりを科学する』
くますけ『エナガの重さはワンコイン』
叶内拓哉『自然散策が楽しくなる! 見わけ・聞きわけ 野鳥図鑑』
デビッド・アレン・シブリー『イラスト図解 鳥になるのはどんな感じ? 見るだけでは物足りないあなたのための鳥類学入門』
日本野鳥の会 : みんな大好き! キツツキの秘密を探ろう
https://www.wbsj.org/join/donation-and-fundraising/donation/2024bm/
