都会に進出し「ヒナ分け」して子育て! イソヒヨドリの知られざる生態

皆さんはイソヒヨドリのさえずりを聞いたことがあるでしょうか。
「ヒーチュリツチーチュルリル」という複雑で美しい声でさえずるので、できればフィールドで、難しければ動画サイトなどでぜひ一度聞いてみてください。
イソヒヨドリはその名前から「海の近くにいるヒヨドリの仲間」などと誤解されがちですが、調べてみるとその生態は意外と奥深く、ただの綺麗なさえずりが美しいだけの鳥ではないことがわかります。
今回はそんなイソヒヨドリについて語っていければと思います!

誤解されがちなイソヒヨドリの正体と生態

イソヒヨドリはスズメ目ヒタキ科に分類される鳥で、ジョウビタキやルリビタキなどと近縁です。
一方、街中や公園でよく目にするヒヨドリはスズメ目ヒヨドリ科。イソヒヨドリとは科が異なります。
外見がヒヨドリに似ていることから名前にヒヨドリとついたようですが、実際にはこの2種はまったく別の種なのです。

ヒヨドリとイソヒヨドリ。「言うほど似てるか…?」と感じた人もいるのでは?


また、「イソ」と名前についている通り、かつては磯や港など海岸近くの地域が主要な生息地でした。
しかし1980年代頃から内陸の地方都市などで繁殖が確認され、2000年代以降はさらにその数が増加しています。中には東京都の銀座などの大都会で繁殖している個体もいるようです。
これは都市にイソヒヨドリが生活する条件が整っているからだそうです。磯などの海辺にはイソヒヨドリが止まって獲物を探すための岩場があり、獲物を捕らえる岩礁があります。都会ではイソヒヨドリはビルや人家や電柱などを岩場の代わりにして獲物を探すことができます。あとは獲物となる昆虫が生息する場所が近くにあれば、イソヒヨドリは生活することができるのです。
また、イソヒヨドリは建物の隙間や空調機など人工物の狭い空間に潜り込んで繁殖することができるため、その点もイソヒヨドリの都会進出の理由の一つです。

ヒナ分けという子育て方法

イソヒヨドリは「ヒナ分け」という少し特殊な子育て方法をとるようです。
巣の中で卵からヒナが孵ると、イソヒヨドリのオスとメスは、ヒナたちに給餌を行います。このとき、親鳥はどのヒナに対しても分け隔てなく餌を与えます。
しかしヒナが巣立ちをすると状況は変わります。オスとメスで、それぞれ担当のヒナを決めたように、特定のヒナにだけ給餌を行うのです
よりわかりやすく言うと、仮にヒナが6羽いたとして、巣立ち前は親鳥は分け隔てなく餌を与えていたのに対し、巣立ち後はオスが3羽を担当、メスが残りの3羽を担当という形で子育てをするということです。
この担当分けは結構きっちりしているようで、たとえばメスが給餌の担当となっているヒナがオスに対して餌をねだると、オスは高い確率でヒナに対して威嚇をするそうです。

私の方で調べてみたところイソヒヨドリ以外で「ヒナ分け」の習性を持つ鳥はあまり見当たらず、少なくとも判明している範囲ではほぼイソヒヨドリだけの習性なのかもしれません。
あくまで予想です。


綺麗な青い羽を持った、鳴き声が美しいイソヒヨドリ。
近年の研究に目を向けると、より奥深い魅力的な生態が見えてきました。
これからも生息地の都会進出が進み、より身近に観察を楽しめる鳥になるかもしれません。そのときは、周りの方々にイソヒヨドリについて教えてあげてください!

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【参考文献・サイト】

Bird Research News Vol.8 No.8 イソヒヨドリ
https://www.bird-research.jp/1/seitai/8_8solitarius.pdf

唐沢孝一『都会の鳥の生態学

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