ウグイス 美しいさえずりの意味と歴史

春の鳥として挙げられるウグイスですが、場所によってはまださえずりを聞くことができるでしょう。
「ホーホケキョ」という美しい鳴き声で有名なウグイス。日本三鳴鳥(コマドリ、オオルリ)にも数えられています。
他の二種と違いウグイスは留鳥のため、一年を通して日本に生息しているのですが、茂みやササ類の中に隠れていることが多く、さえずりが聞こえてこないと意識することは少ないのかもしれません。

ウグイスのさえずりには、主にオスがメスに対して求愛を目的とした「ホーホケキョ」というもののほかに、「ケキョケキョケキョ…」と、けたたましく鳴くことがあります。
これは谷渡り鳴きと呼ばれ、何かに警戒しているときに発する声だそうです。この声を縄張りの中にいるつがいのメスが聞くと、周囲を警戒し外敵に備え巣を守るということもできるようです。ウグイスを探して茂みに近づいたときにこの声が聞こえてきたら、もしかしたらあなたのことを警戒しているのかもしれません。

日本人にとってウグイスは古くから親しまれている鳥で、平安時代には小鳥を飼育することが流行ったそうですが、その中でもウグイスはその声の美しさから特に人気があったようです。
室町時代になると貴族の間で、ウグイス同士でさえずりの美しさを競わせる「鶯合(うぐいすあわせ)」も行われるようになり、ウグイスの飼育を専門の生業とする「鶯飼(うぐいすかい)」という職業もあったようです。
その後鶯合の文化は江戸、明治、大正と続きましたが、昭和時代にウグイスの飼育が法律で禁止されるのと同時に消滅しました。

ところで、東京都には「鶯谷」という地名がありますが、この地名にもウグイスのさえずりがかかわってきます。
江戸時代、上野にある東叡山寛永寺では、京都から皇族がやってきて寺の住職位に就く習わしがありました。
元禄時代に住職の地位にあった公弁法親王は、江戸に生息していたウグイスの声に違和感を覚え、京都から美声のウグイス3,500羽を運ばせて、寛永寺の領地であった根岸の里に放したという逸話があり、のちの鶯谷の由来となっています。

昔も今も、日本人のハートをつかんで離さないウグイスのさえずり。夏本番になるとさえずりも止んでしまうので、今のうちに存分に聞いていたいところです。

【参考文献】

叶内拓哉『自然散策が楽しくなる! 見わけ 聞きわけ 野鳥図鑑

細川博昭『鳥を読む 文化鳥類学のススメ

NHK『街にも進出!?ウグイス美声の真実』(初回放送日:2024年4月28日)

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