オシドリと「オシドリ夫婦」について深く考えてみた

2月になり、冬も盛りの季節ですね。
水場には色とりどりのカモたちが北国から飛来しています。
どのカモが一番美しいかは人によってまちまちでしょうが、どのカモが一番派手かでいえば、やはりオシドリが最有力候補になりそうです。
独特の美しい色合いを持ち人気が高いオシドリ。
冬場に日本全国各地の池などで見られ、都心だと新宿御苑などで観察することができます。

オシドリのオスは、冬でこそ派手で美しい羽をしていますが、繁殖期以外はメスに似た地味な色に衣替えを行います。
この衣替えはエクリプスと呼ばれ、派手に着飾る必要がある繁殖期以外は、外敵から身を守るために隠れやすい色に変化するのです。
エクリプス後のオスの見た目はメスとそっくりになりますが、くちばしの色までは変わらないので、ここで雌雄を判別することができます。

エクリプス中のオシドリ@多摩動物公園
メスはくちばしが灰色ですが、オスはピンク色のままです

オシドリについて語るとき、ほとんど確実に持ち出される話題が「オシドリ夫婦」という言葉についてです。
愛鳥家の皆さんの中にはご存じの方も多いかもしれませんが、実はオシドリのつがいはほとんど毎年パートナーを変えており、人間でいうところのオシドリ夫婦ではないようです。
また、つがいで仲良さそうに泳いでいる様子も見られますが、実はこれも楽しくデートしているというよりも、オスがパートナーのメスを、ほかのオスに取られないようにぴったりくっついてガードしているというのが実情のようです。
しかし最近の研究では、同じオシドリのカップルが6年間もつがいでい続けたという記録もあります。
中には純愛を貫くオシドリのカップルもいるということですね。

ところで、なぜ「オシドリ」夫婦なのでしょうか。
昔の人が、たまたま仲睦まじそうに泳いでいるオシドリのつがいを見て思いついた言葉なのでしょうか。
しかしそうなると、「マガモ夫婦」でも「キンクロハジロ夫婦」でもよさそうな感じもします。
実はこの「オシドリ夫婦」は中国の故事に由来する言葉なのです。

ある国に、仲の良い夫婦が暮らしていました。
国の暴君が、その夫婦の妻を強引に奪ってしまい、一人になった夫は自ら命を絶ってしまいます。
妻の方は「夫と同じ墓に葬ってほしい」という遺言を残し、夫の後を追ってしまいます。
しかし性格の悪い暴君は、妻の墓を夫の墓から少し離れた場所に作ってしまうのです。
すると、二人の墓から樹が生えてきて、やがて合流して一本の樹になりました。
その樹上にはオシドリのつがいが営巣し、人々はこの2羽のオシドリを、亡くなった夫婦の生まれ変わりだと噂したそうです。
この故事は「鴛鴦之契(えんおうのちぎり)」と呼ばれています。

実際に、オシドリはカモ類の中では珍しく樹(樹洞)に営巣します。
このお話であれば、夫婦の生まれ変わった鳥がオシドリであることも納得がいきますね。

日本では冬限定の野鳥のオシドリ。
今のうちにその美しい姿を目に焼き付けておきたいですね!


【参考文献】

山階鳥類研究所『山階鳥類研究所のおもしろくてためになる 鳥の教科書』

くますけ『エナガの重さはワンコイン』

叶内拓哉『自然散策が楽しくなる! 見わけ・聞きわけ 野鳥図鑑』

オシドリ日本野鳥の会 京都支部
https://wbsj-kyoto.net/yachoulist/%e3%82%aa%e3%82%b7%e3%83%89%e3%83%aa/?termslug=ya_o&select_id=1&termname=%E3%81%8A

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です