鶴の一声、雀の涙、千鳥足など、鳥の名前の入った慣用句はたくさんあります。昔の人がその場の状況や人の行動などを鳥になぞらえて作った言葉なのでしょうが、果たしてその言葉は本当に鳥たちの実態に合っているのでしょうか。
また、私たちは鳥の慣用句について本当に理解しているのでしょうか。
今回は、鳥にまつわる慣用句の由来や実際の鳥たちとの違いについて語っていきたいと思います。

1.烏の行水
烏の行水(からすのぎょうずい)は、入浴時間が極端に短い様子を表す慣用句です。カラスの水浴びが短いことから生まれた言葉で、「あなたの風呂は短くてカラスの行水ねぇ」なんて言われると、まるで体をちゃんと洗っていないと言われているようです。
確かにカラスをはじめ鳥たちの水浴びは短時間で終わることが多いですが、鳥たちが体の清潔さに無頓着というわけではありません。
鳥は1日のうち少なくとも10%の時間を羽繕いにかけています。つまり2時間以上です。
羽が清潔でその機能を十分発揮できるようにメンテナンスすることは、空を飛ぶために大切なこと。鳥たちはきれい好きなのです。
2.目白押し
目白押しという言葉は物事や予定がたくさん並んでいる様子を表し、その由来は枝にたくさんのメジロが止まっている様子からだそうです。
いわゆるエナガ団子のように、巣立ったばかりのメジロの幼鳥が、親が運んでくる食事を待って一本の木の枝にずらりと並んで止まっている状態からきているのだと考えられています。
しかしこの目白押しの状況、野外で観察したことのある人は少ないでしょう。
メジロは美しい声で鳴くので、昔はよくペットとして飼われていました。メジロを捕まえる職業もあり、一つのカゴにたくさんのメジロを閉じ込めておくこともあったそうで、そこから目白押しという言葉が生まれたとする説もあるようです。

3.オシドリ夫婦
オシドリたちが実は仲睦まじいという意味でのオシドリ夫婦ではないという話は、愛鳥家の間ではあまりにも有名でしょう。ほとんどのオスは毎年パートナーとなるメスを変えており、子育てはメスに任せきりです(多くのカモがそうですが)。
おしどり夫婦という言葉は中国の「鴛鴦の契」というお話からきています。
詳しくはオシドリについて取り上げた記事で紹介しています!
オシドリと「オシドリ夫婦」について深く考えてみた

4.漁夫の利
漁夫の利という言葉には一見鳥の名前が入っていないように思えますが、実はこの言葉、「鷸蚌(いつぼう)の争い 漁夫の利」という慣用句を縮めたものなのです。
シギがハマグリを食べようとしたら、ハマグリが怒ってシギのクチバシを挟んだ。どちらも譲らなかったら、漁師がやってきてどちらも捕まえてしまったという話で、こちらも起源は中国の故事成語です。

5.一富士二鷹三茄子
おめでたいものを並べたとされるこの言葉ですが、実はここに登場する鷹は愛鷹山という山のことであるという説があります。徳川家康が駿府城(静岡県)にいたころ、初茄子があまりにも高かったので、富士山や愛鷹山といった高いものと並べて言ったのが、いつのまにかおめでたいものとして広まったという説です。
他にも、単に駿河の名物を並べただけという説もあり、四は扇、五は煙草、六は座頭と続きます。
ちなみに徳川家康は鷹狩りの熱狂的なマニアだったと言われています。
普段何気なく使っている言葉を振り返って考えるのはとても面白いですね。
鳥好き界隈でお話のネタにしてみてはいかがでしょうか♪
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【参考文献・サイト】
デビッド・アレン・シブリー『イラスト図解 鳥になるのはどんな感じ? 見るだけでは物足りないあなたのための鳥類学入門』
国松俊英・谷口高司『鳥のことわざうそほんと』
